uncleyieのア・デイ・イン・ザ・ライフ
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スティーヴン・スピルバーグの映画を観る・・・・・『激突!』
 スティーヴン・スピルバーグというと代表作は何だろうか・・・・? 『ジョーズ』『未知との遭遇』『E.T』『インディ・ジョーンズ・シリーズ』『ジュラシック・パーク』『シンドラーのリスト』『A.I』『宇宙戦争』・・・とにかく多作の監督である。でも代表作は何かと問われると、人それぞれジェネレーションによって違うだろう。古い人なら『ジョーズ』だろうし、若い人なら『宇宙戦争』や『ミュンヘン』『マイノリティ・リポート』と言うかも知れない。それで、私にとってスティーヴン・スピルバーグの数ある作品の中で、何が1番好きな映画かと言われれば、間違いなく『激突!』と答えるであろう。

 『激突!』1971年製作、アメリカ映画

 監督 スティーヴン・スピルバーグ
 出演 デニス・ウィーヴァー
    キャリー・ロフティン
    エディ・ファイアストーン
    ルー・フリッゼル

 【あらすじ】ごく平凡な市民でセールスマンのデヴィッドは、貸した金を返してもらいに知人のもとへ向っていた。ほとんど交通量のない一本道のハイウェイ。彼は目的先へ行くため急いでいた。すると前方をトロトロと巨大なタンクローリーが道路を塞ぐように走っていた。デヴィッドは何気なくタンクローリーを追い抜かし、また元のスピードに落としたところ、先ほど追い抜いたはずのタンクローリーが猛スピードで、デヴィッドの車を追い越すや、またまたスローダウンして前を塞ぐようにトロトロと走り出すのであった。デヴィッドは驚いたような顔をして、またスピードを上げて、タンクローリーを追い越した。すると再三にわたってタンクローリーはデヴィッドの車を追い越し、また前を塞ぐように走ってしまうのである。デヴィッドはおかしいと思い、スピードを上げ、ターンクローリーを追い抜かし、猛スピードで引き離し、人里離れた公衆電話を見つけると、警察に電話した。その時、タンクローリーは現れて、電話ボックスごとぶっ壊してしまい、タンクローリーの運転手がデヴィッドに殺意を抱いていることが判明した。さて、ここからデヴィッドの小型乗用車と巨大なタンクローリーの息が詰まるようなカーチェイスが始まるのだ。はたして結末は如何に・・・・・。

 この映画はスピルバーグが弱冠25歳に時に撮ったテレビ映画である。でもスピルバーグの処女作品として、イギリスでは劇場公開された。日本では1974年だったと思うが、例の淀川長治がナビゲーターとして出演していた日曜洋画劇場で、本邦、初のテレビ放映という形で公開された。

 私はこの映画をテレビで観て、この監督は天才だと感じた。主な出演者はデニス・ウィーヴァーが演じるセールスマンのデヴィッドだけである。主役はデヴィッドの運転する赤い小型乗用車と薄茶色の巨大タンクローリー。一言でカーチェイスと言ってしまうのは簡単だが、ただ追い越しただけで、命が狙われるといった不可解なストーリー。逃げる乗用車に追う巨大なタンクローリー。この、まさに映画の原典とも言うべき単純な話の中に、映画の持つエッセンスが全て含まれているのである。逃げる小型者と追う巨大タンクローリーは、さしずめジャングルで言うところの逃げる草食動物と追う肉食動物のようである。無機的なタンクローリーが迫ってくる様は、まさに猛獣と化したライオンのようであり、豹のようであり、逃げる小型車はカモシカか兎のように見える。

 極めて単純で追いつ追われつといった映像だけで、あそこまで人を引きつけられる映像作家というのは、なかなかいないものである。現在ならすべてCGを駆使して映画を撮ってしまうだろうが、CGというものが無かったあの頃、スピルバーグはいったいどのようにして、あれだけ迫力ある映像を撮れたのか、それも不思議なら、話の起承転結というのもあり、こちらが殺さなければ殺されると思った主人公が、心境の変化から車の走らせ方も変わってくる。この辺りの心理面の捉え方も実に上手い。

 この映画はテレビ映画だったので、彼は劇場用映画としては、この3年後に『続・激突! カージャック』で監督デビューするが、その後に『ジョーズ』で衝撃的な映像を撮り、世間をあっといわせ、『未知との遭遇』『1941』『E.T』と話題作を次から次へと世に出し、すっかり有名監督となってしまった。最近は「カラーハープル」『シンドラーのリスト』『プライベート・ライアン』等のシリアスな作品も多く、今や映画界の巨匠としなってしまった感があるが、私は彼の作品で未だに『激突!』以上に好きになれる映画は無い。

 やはり金も無く、邪念も無く、若さと才能だけで撮った『激突!』だから、これだけ今日においても、私の心に深く印象に残っているのかもしれない。したがって、これ以降、新人監督で衝撃的なデビューをする人は私の中では未だにいないのである。

タンクローリーを追い越してから悲劇が始まる。


逃げる獲物と追う猛獣。映画の原点はここにある。