実はこの時のデビュー・アルバムが上の写真にあるアルバムである。録音されている曲は7曲で、『Don't Explain』『You'd be so nice to come home to』『What's New』『Falling in love with love』『Yesterdays』『Born to be blue』『'S Wonderfull』
これらはジャズでお馴染みの曲だが、ヘレン・メリルが歌うと何か艶っぽい。この時、クインシー・ジョーンズが編曲して、ブラウニーと愛称のあるクリフォード・ブラウンがトランペットを吹き、オスカー・ペティフォードがベースを担当した。そしてこのアルバムは評判を呼び、ヘレンの歌声は「ニューヨークのため息」と評された。それ以来、『You'd be so nice to come home to』は、ヘレン・メリルの代名詞的な曲になってしまった。だが、その2年後、若きトランペッター、クリフォード・ブラウンは事故死して、離婚したヘレン・メリルも一度、現役を退く。ところが1966年に来日。そして、5年間ほど日本に滞在してアルバム製作やラジオの仕事をこなしたという。
最初の曲はアルバム・タイトルと同じ『処女航海』で、船出の情景を表現していて、2曲目以降が『The Eye Of The Hurricane』『Little One』『Survival Of The Fittest』『Dolphin Dance』であって、それぞれが独立している曲でありながら、全体的に海のイメージを描写している。つまりアルバムのテーマに沿って曲が構成されている。これは時代の流れかもしれないが、単なる曲の寄せ集めのような、これまでのアルバムとは雰囲気も違っていて、とめどもなく管楽器がメロディを奏で、ハービー・ハンコックのピアノが彩りを加えるが、音色そのものは暑苦しさが無くサラッとした印象さえ受ける。人によっては60年代を代表するジャズだという人もいて、新主流派と呼ばれ、ピアノのハービー・ハンコックをはじめとしてフレディ・ハバード(トランペット)、ジョージ・コールマン(テナー・サックス)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムズ(ドラムス)といった新時代のジャズの流れを汲む面々が顔を揃えて、このアルバムは録音されたのである。つまり1960年代の中頃、マイルス・ディヴィスのグループにいたメンバー達で形成されているのである。だから各自が技を競い合っているようで、実は個人個人のプレイが積み重なって全体の雰囲気を構成しているといえばいいだろうか・・・・・。とにかく60年代を代表するジャズ・アルバムである。
数年前、『スウィングガールズ』という山形の女子高生ばかりで形成されているビッグバンドの成長を描いた映画があった。その中で彼女たちは『A列車で行こう』を盛んに演奏していたが、もう一つ映画の挿入曲として欠かせない曲があった。それは『シング・シング・シング』である。『シング・シング・シング(Sing Sing SIng)』は、スウィング・ジャズを代表する曲で、よく演奏されるが、女子高生が演奏する『シング・シング・シング』というのも珍しくて、映画のそのシーンを見とれていた覚えがある。
収録曲は『Autumn Leaves』『Well You Needn't』『Dear Old Stockholm』『I Wanted For You』『Love For Sale』『How Deep Is The Ocean』『Tempus Fugit』『Yesterdays』『Kelo』『Enigma』『Somethin' Else』『It Never Entered My Mind』である。『サムシン・エルス』以外は他人の曲であるが、アルバムの頭の曲『枯葉』を聴いただけで、マイルス・デイヴィスがただならぬトランペット奏者であることが解る。この『枯葉」は、誰もが知っているメロデイなのに、何故か新鮮に聴こえる。ミュートを駆使した実にクールな演奏で、アルト・サックスのキャノンボール・アダレイを完全に食っている。ちなみにピアノはハンク・ジョーンズで、ベースはサム・ジョーンズ、ドラムスはアート・ブレイキーである。